視線の権利
手をねじ上げられた奴はものすごく痛そうだった。
涙目の視界がクリアになると、かなり長身で切れ長の涼しい目元の男の人が表情ひとつ変えず
まるで何の力も加えていないかのように失礼な奴の手首に片手をかけて立っていた。
「はっはなせよっ! いてえよー!」
「嫌ですね。彼女は離せと言っていたのに君はそうしなかった」
私はまだ脚がガクガクして壁にもたれていた。
「ケイナ!」
ヒールの音を響かせアキノが走ってきた。
「なんか嫌な予感がしたのよ! あ!」
「遅れて申し訳なかったですね」
「長谷川先輩!」
あの。
助けてもらってなんですが。
長谷川さんも怖そうなんですけど。