視線の権利
あたらしいヒールの先は見事に奴のみぞおちにクリーンヒットした。
私は
「わ、私は『和』の武道知らないし! 長谷川さんもアキノも怒るかもしれないけど! 何にも知らないけど! アキノくらい優しくて面倒見がよくて料理上手で! それから綺麗な女の子は居ないんだから! アキノが強いからって!」
「ケイナ」
「ごめん! アキノ! でも!」
「長谷川先輩とは何でもない。でも……大学時代からこんなだけど」
アキノは続けた。
「本当よ。私はもと男の子の体で……改造しても好きな人にしか体を見せられないの」
「な、本当だろ?」
「だから何っ!」
さらに蹴りをいれようとする私を、長谷川さんがまた、何の 力も感じさせず
わたしを
優しく抱きしめて制した。
やさしい制止に、私は涙をボロボロ流しながら声のトーンを落として抗議した。
「アキノは体だけの話でしょ? あなたこそ女の子泣かせる悪いゲイよりのエセバイセクシャル以下よ。最低。心が腐ってるあなたみたいな人、大嫌いよ」
マサシは、本当に心がゲイだった。
他の女の子に行っても。
すべて知っていて
私は……。