視線の権利
二次会
結局、気づかないうちにアキノが後輩たちを呼び出し、絡んできた奴は酔っ払って、彼を連れてきた問題の後輩が送って行った事にして退場。
その場で問題後輩くんは……。
優しい倉沢主将も流石にその場で退部を言い渡した。
もともとモテたくて武道をやりたがって不真面目で煙ったがれてたみたい。
私は
涙でめちゃくちゃになった顔を直しにアキノと化粧室にいた。
私たちの戻りが遅かったのは酔っ払った彼らを介抱してた、って事にして合コンにあまり波風立てないよう配慮してくれたみたい。
アキノに化粧直しを手伝われながら私はひたすら謝っていた。
「ケイナ、また泣く」
「だって。こんなに迷惑かけて。せっかく色々してくれたのに」
アキノは、ふっと息を吐き出し首を横に振った。
「謝るのはこっちよ。怖かったでしょ?さっさと顔直して二次会行くわよ」
「でも長谷川さん、暴力嫌いみたいだし。嫌われたよね」
「あのねー」
アキノが両手を腰に当て怖い顔をする。
「長谷川先輩はそんな小さな人じゃないわよ」
「あ、うん」
理由は理由だけど
長谷川さんに抱きしめられた事を思い出し、かあっと頬が熱くなる。
「ほんとに悪いと思うなら、カラオケで長谷川先輩に一曲捧げなさい」
「え! アキノみたいに上手くないし!」
「ほら! ちゃんとパウダー仕上げて!」
あの眼とぬくもりのギャップ……。
そうだ。
まずお礼を言わなきゃ!
化粧室の扉を開けるとき
アキノが小さな声で
「ありがとう。ケイナ」
と言った。