[妖短]空の境界線を越えて
真っ黒の綿達に押し潰されて身動きが取れず、息苦しさに早く目覚める事を願っていると、
綿達の後ろから、別のモノがにゅうと出て来た。


着物姿の中年男性。
背が高く、下を見下ろすような…。


背筋が凍りつく。

あれだ。
昼間見た―


『見越』
五十嵐の声でそう聞こえた。


ソイツがコチラを向いて、徐々に近づいて来る。
近づくほど、ソレは大きくなっていく。


『見越した』
そう!見越したって言えば…


綿達がざわつく。
見越入道はどんどんと近づいてくる。
見上げる顔が靄がかる。


「・・・・・・」

声が出ない。

怖いのか、のどが引き攣る。
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