[妖短]空の境界線を越えて
庭は本当に鬱蒼としていて、
真ん中を割るように砂利と飛び石が配されていた。

飛び石なんて、雨が降ったら危なそうだが、
庭は凄いのに苔も泥も付いてはいない。

意を決して飛び石の上を渡って行く。


蝉の鳴き声がもう聞こえる。
はやいな。
これだけ緑が多かったら、そうかも。


しばらく行くと道が二手に別れていた。

木々に遮られて家がどちらかもわからない。

困ったな。


道を見比べていると、
飛び石のうち1つの上、ちょうど真ん中に石が落ちていた。

石には紐が巻き付けてある。
落し物かな。

近づいて拾おうとしたら、
「神山さん」
反対側から五十嵐の声がした。

「五十嵐」
私は振り返って、



石化した。
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