あめとてるてる坊主
 私はなんだか微笑ましくて、さっきのことを忘れかけていた。

 いつもは、ここで楽しげな沙世ちゃんの声が聞こえるはずなのに。

 私は振り返った。

 沙世ちゃんは、俯いたまま立っていた。


「沙世?」


 不審げな里美ちゃんの声に、顔を上げた沙世ちゃんは、私を見た。

 物悲しげな、縋りつくような顔で。

 その顔から逃げたのは私だった。



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