あめとてるてる坊主

 携帯を握りしめる私に彼が、あっと声を上げた。


「そういえば、福沢、元気?」

「え?」


 気遣わしげなその顔に、私は眉間を寄せてしまった。

 ああいけない。


「あー……メールも来ないし、しても、なんか元気ないっていうか。なんかあったのかなって」


 困ったように笑う彼に、私は何も言えなかった。


「君島さんなら知ってるかと思ったんだけど」

「……元気、ですよ」


 私は笑えていたと思う。

 沙世ちゃんが元気なのは本当なのに。

 嘘をついたような気がした。




< 111 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop