あめとてるてる坊主
「あの……っ!」

「ん?」


 首をかしげて私を見降ろしてきた彼を、私はゆっくりと見上げる。

 細まる目が眼鏡越しに見えた。

 ああ、なんて優しい瞳だろう。

 なんて、優しい笑顔なんだろう。


「ずっと、返さなきゃって思ってて。
それに、ちゃんとお礼も言えてなくて……遅くなってごめんなさい。
あの時は、ありがとうございました」


 私はかばんから出したタオルとともに言葉をささげた。

 彼と初めて目が合ったきっかけ。

 彼の声を聞くことができたきっかけ。

 私は彼をもっと知りたいと思ったきっかけ。
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