あめとてるてる坊主
 もし探しに来てくれたのが里美ちゃんなら、私は泣いていた。

 もし探しに来てくれたのが沙世ちゃんなら、私は笑顔を作ってた。


 なのに、私は彼の前で何もできない。

 泣くことも、笑顔を作ることさえできない。

 私の中で喜怒哀楽がごちゃ混ぜになっていた。


「みんなには場所を取ってもらってるんだ。行こう、今度ははぐれないようにね」


 彼は笑う。

 私の気持ちなど知らずに。


「うん」


 気持ちとは違う答えを口に出し、その背中を追う。

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