本屋の花子〜恋をしたら読む本〜
その退職届けを僕は左手で引き寄せると内容確認もしないで手前の長い引き出しに裏を向けて仕舞いました


Sマート花形接客サービス係僕のNo.1の小池花子さんは実はとあるホテルのフロントに正社員としてオファーがあり来年1月から就職が決まっているのです




僕が何故知っているかはそのホテルの社長様から引き抜きのお話しを頂いていたからです



僕が決める事でも有りませんから小池さんの決める事ですし知らないふりをしていたんです


多分、小池さんは断らないと思っていました僕の側から居なくなるよな気がしていました



結局僕は夕べ引き止めようかとカノンを何度も聞きながら思っていましたけど


頑固な小池さんが一度決めた事を曲げる事も無い事が分かっていたので口には出せませんでしたね


僕は今朝家を出る時にもう一度二人の写真を見ました


あの頃に戻れたら僕は決して彼女を泣かせたりしないと思いましたけど撤回しました


何故なら何度やり直しても二人が何時迄も一緒にいられる事は無いと


僕は、Sマートも僕からもサヨナラする事を決めた小池さんをただ思っている事しか出来ないのかと思うと事務所を飛び出していました


そして息を殺して泣くのを我慢している小池さんを追いかけました

休憩室に入ると小池さんはまるで今にも僕に駆け寄ってきて抱きつきそうな顔をしていました


ふと息を止めた小池さんは身動きせずに立ち止まり苦笑いで僕を睨みつけていましたよ


こんな顔を何度させて来たんだろうと僕は泣きたくなりました



『送別会をさせて下さい』


あの事件以来どんな飲み会もどんなに誘っても小池さんは参加しなくなっていましたし、誰よりも皆にして来た小池さんに送別会を開いて御礼がしたかったんです



昨日のクリスマスの夜のような切ない思いはしたくありませんでした


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