伝えきれない君の声


はっと我に返り、
手を離す。


「ごめん…!」


慌てて謝る姿に、
胸が痛くなった。


「何でもないなら、いいんだ。」

カウンターに差し出したアイスコーヒーを手に取る、彼。


「だけど……



すれ違いたくないんだ。
今なら、今ならまだ……」


「お!久しぶりだな。いらっしゃい。」


店長が割り込むように帰ってきた。


「ああ…どうも。」


なんて悪いタイミング。
彼は俯き、
一番奥の席へと腰をおろした。


一体、何て言おうとしたの?




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