伝えきれない君の声


「少しだけですよ?」



深呼吸したあと、
ギターを手にした。


久しぶりの感覚。
ずっと遠ざけてきたから、
ほんとはすごく怖い。


でも、聞きたいと言ってくれる人がいるのなら


例え、“彼”にもう聞いてもらえないとしても……











歌い終わると、静寂に包まれた。き、気まずいじゃないか。


「あのー…どうでし…


「すげーじゃん!あんた!すげーじゃん!」


「えっ…?」


「いやー、感動したわ。
なに、あんたプロなわけ?!」


「まさか、違いますよ。」


「まじ?!プロになっちゃえば?」


あまりの勢いに思わず笑ってしまった。


「もう、大袈裟ですよ。
でも、ありがとう。嬉しいです。」


久しぶりの歌に、温かい気持ち。本当に嬉しくて、顔から笑みが消えない。



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