伝えきれない君の声



「美春…ってさ、良い名前だよね。」


突然の発言。
今は、菅原さんの車の中。


外は、港の見える景色。
遠くにはキラキラ輝く観覧車。


「そう…ですかね?初めて言われました。」


「美春。…うん、良いわ。」


菅原さんは確かめるように、
私の名を呼ぶ。


ちらりと覗くと、
彼は遠くを見つめていた。


暗闇でよく見えないけれど、
スッと高い鼻


ハンドルに置く、
男らしいゴツゴツとした指先。


彼からは、“男”を強く感じる。変な言い方だけど、
なんだか妙な安心感。


「ここ、綺麗だろ。」


「はい。なんだか落ち着きますね。」


「嫌なこととか、イライラするとき、よく来るんだ。
人間、どっかでストレス発散しなきゃ、やってらんねぇよ。」


上司にも腹立つし。
なんて言って、バツが悪そうに笑った。




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