伝えきれない君の声


ああ、そうか。
わかった気がする。


この人は、
何も包み隠さず素直に話してくれる。


だから、私も気が楽なんだ。


“秘密”を感じない。


倉田瑞季とは、そこが違う。




「あんたはさ、歌とかでストレス発散したりすんの?」


「私は…なんだろう。
確かに歌かもしれない。
一番素直になれるのは、歌かもしれません。」


「かっけぇな、歌とか。
俺なんてこの景色見て、ぼーっとするだけだよ。」


「でも、素敵です。
私になんか教えて良かったんですか?
特別な場所なのに…」



すると、彼は大きくため息をついた。


「あんた、鈍感?」


「へっ?」


「あんただから、だろ?
こんなとこ、殆ど教えねぇよ。」


私…だから…?





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