伝えきれない君の声
「…あ、もしや彼氏がいるとか?」
言葉に詰まる私に、
思いついたように話す。
「ごめん。いきなりでびっくりしたよな。」
「ちが…うんです。あの…彼氏はいないんですけど…」
「けど?」
――好きな人が、います。
……なんて言えない。
だって、こんな叶わぬ思い
持ってたって仕方ないじゃない。
「好きな人が、いるとか?」
「えっ…」
菅原さんは、私の肩から手を離し前を向き直した。
「片想いってやつ?」
――片想い……
「なら、俺は応援するよ。
今のは忘れて。まぁ、常連の客とでも思っといてよ。」
「常連?」
「これからなるってことで。
常連客にさ。」
そう言って、笑う姿に
胸が締め付けられて、
なぜだか泣きそうになった。