伝えきれない君の声
表の看板を片付け、店を閉めるために外へ出る。
その時、
ふと背中に人の気配を感じた。
「すみません、今日はもう……
そこには、
いつかと同じように傘もささずに立ちすくむ、
倉田瑞季がいた。
「どうして…?」
一向に強まる、雨。
濡れた髪に、
濡れたスーツ。
どうしてこの人は、
こんなに悲しそうな顔をしてるの?
「倉田さん、風邪ひいちゃう。
とりあえず中に入って……
彼の腕を引こうとした、
私の手を、逆に強く引かれ、
いつしか彼の胸の中に抱き寄せられた。
濡れて冷たいはずなのに、
彼の鼓動に体温に、
私の体は熱くなった。