伝えきれない君の声


悲惨な事実なんて関係無しに、
私はやっぱり彼が恨めしくもある。


いつも、私の心を掴んで離さない。
…いや、ただ私が彼の心に捕まりたいだけなのかもしれない。


罪深いのはどっちだろう?




「……ごめん…」


「えっ…?」


「俺の、せいだよね…」


「何がですか?」


いきなりの言葉。
悲しげな声色。


タオルで隠された顔には、
今一体どんな表情が隠されているんだろう。




ああ、もう自分から言ってしまおうか。
そのほうがスッキリするよね。



そんな苦しそうな姿、見たくない。




…違う。
苦しいのは、私だ。


私がもう、苦しみたくないんだ。




< 128 / 154 >

この作品をシェア

pagetop