伝えきれない君の声
「もし、俺が今、君を抱き締めたって、なんの代償にもならない。
でも、その涙を止めることはできるかな?」
――涙…?
慌てて自分の頬に触れる。
指先に感じる、冷たい雫。
私、泣いていたんだ…
無意識のうちに、反射的に、
こんなことって、あるんだ。
「信じてほしい…」
そう言って、
私を抱き締めた。
湿った体温。
なんだかすごく、切ない。
「君に会ったのは、“仕事”じゃない。」
さらに強く、抱き締める。
「君といると、ほんとに安心するんだ。
憂鬱だった毎日が、いきなり色付いて…君に会いたくて仕方なくて…
夢を、自分の捨て去った夢を、
思い出させてくれた。」
私の首筋に顔を埋める。
思わず漏れそうになった声を、必死に我慢した。
けど、そんなのも虚しく、
彼の行動は、感情的に、理性的に私を攻め始めた。