伝えきれない君の声
「テレビ局に来るの、もしかして初めて?」
エレベーターに乗るなり、
私に問い掛ける。
「出前で、少しだけ来たことあります。」
「そっか。」
そっけなく言い、
ボタンを押した。
(5階なんだ……)
なんてぽつり、心の中で呟く。
「…あの、菅原さん。」
「なに?」
「えっと…手…」
「手?」
未だに握られた、私たちの手。
それに気付くと、
ああ、ごめん。と慌てて離した。
「なんか必死すぎて気付かなかったわ。」
やや赤くなる耳。
なんだか妙に可愛らしくて、
「なにニヤニヤしてんだよ。」
「えっ?!」
自然に微笑んでいたらしい。
「ありがとうございます…」
「別に、俺は何もしてないよ。」
「でも、きっかけをくれたのは、菅原さんだから。
それに……」
「それに?」