伝えきれない君の声
「え!ち、違うんです…ただ…
値段が高いなと思って。
なんて、言えるわけない。
ここへ来てまで、
値段を気にするなんて
嫌な女だし、
ケチケチしてるなんて思われたくない。
だから、
「種類が…たくさんあるなと…」
と、誤魔化す。
倉田瑞季は一度目をパチパチと瞬きし、
くしゃっと笑った。
「確かに、迷うよね。いいよ、慌てずゆっくり選んで。」
「は、はい。」
よかった。バレてない。
パスタを決めて、
運ばれて、食事をして、
交わした会話の中で、
私は彼を少し知ることが出来た。
彼の年齢は、22歳。
小さい頃から、
音楽好きの叔父からギターを
教えてもらっていた、ということ。