伝えきれない君の声
♪〜♪〜♪〜
携帯の着信が鳴り響く
2人の間を、切り裂くように。
「…ごめん。ちょっと待ってて。」
携帯を右手に掴み、
早足で表へと向かう、倉田瑞季。
その後ろ姿を、
遠ざかる、後ろ姿を
ぼんやりと見つめた。
携帯の着信に、
眉を寄せた彼の顔が、
忘れられなくて……
心の中が、
ざわざわと
妙な不安の渦に
取り巻かれていた。
目の前にある、
空になった食器だけが
彼がいたことを
訴えていた。