伝えきれない君の声
彼女は
出来上がったキャラメルマキアートを受け取り、
カウンターを離れた。
ゆっくりと席につき、
コップへと口を付ける。
「…美味しい…」
そう呟き、私を見た。
目が合い、何となく微笑むと
彼女も安心したように笑った。
目尻を少し下げて。
そして店の片隅に置かれたギターに気付き、
軽く眉を寄せた。
私はそれを、見逃さなかった。
だけど、
次から次へと現れるお客さんに紛れ、
いつしか彼女の存在は消えていた。