伝えきれない君の声
「なぁ、栗田。」
店長はお店の壁にかけられた
カレンダーを見ながら、呼ぶ。
「どうかしましたか?」
「なんかさ、あの若い兄ちゃん全く来なくなったな…と思わないか?」
「倉田さんのことですか?」
「うん。前はさ、ライブにも何回か参加してくれたし、コーヒーも飲みに来たのに……」
確かに。
彼は最近来ていない。
「忙しいんですかね。」
「でもあの兄ちゃん、ミュージシャン目指してるとか言ってなかったか?
仕事はしてなさそうに見えたけどな。」
そう。
してなさそうに…見えた。
“見えた”……?
「…店長。」
「ん?」
「倉田さん…て、ほんとにミュージシャンなんて目指してるんですかね…」
「へ?どういうことだ?」
妙に胸がざわざわする…
なんだろう。