伝えきれない君の声
「お願いします…!あのっ、私…」
何かを察した店長は、
「そこの傘持ってけ。」
と車内に残されたビニール傘を差し出した。
「ありがとうございます…!」
私は車内を飛び出した。
今は青信号。
車は走り去る。
降りしきる雨。
傘があっても足りないほど、
雫たちは体に染み付く。
走って、走って
彼を見つけなければ
どこ…
どこに行ったの…?
1つ先の曲がり角。
――見つけた…!
私は無我夢中で叫んだ。
「倉田さんっ……!!」
振り向く。
彼は振り向いた。
だけど、
振り向いたのは、
私のほうでは無かった。
彼へと走り寄る、女性。
彼は、
そちらに目を向けたのだ。