伝えきれない君の声
私に、
私に聞かせて欲しい。
いつものように、
――歌うように。
立ち上がろうとした彼の、
シャツの裾を思わず掴む。
「…え?」
驚き見返す彼。
どうすることも出来ず、
熱で潤んだ瞳で
私も見つめる。
それと反対に、乾いた唇。
熱に任せて、
言ってしまえ。
なのに、
なのに、
口を突いて出た言葉は
「好きです…」
なんていう、
か細い声。
あまりの頼りなさに、
自分でも泣けてくる。