伝えきれない君の声
彼女の隣には、
倉田瑞季、ではなく
違う男性が立っていた。
彼のように長身の男性で、
でも年齢は明らかに上である。
たぶん…この女性とは10は離れている気がする。
いや、もっと上かもしれない。
「ここ、夜にはライブやるんですよね?」
甘ったるい声で、聞かれる。
「…はい。」
そう言うと2人は目を合わせ、
笑った。
「よかった。もうお店入っても大丈夫かしら?」
「あ、はい。今から準備いたしますので…」
ドアを開け、2人を店へと促す。
その瞬間、
香水の香りと
ありがとう。と
男性から言われた。
響く、良い声だった。