カナリアンソウル
Chapter.1

突然

「好きかもしんない」

そう言って来たのは、私が片思いしている相手では無かった。

失礼だけど残念な気持ちと、恋愛経験の薄い私に「告白」はとても新鮮に映った。

「ひろみはどうしたの?」

「別れたけど、ひろから聞いてない?」

席が前後なだけあって色んな話を聞かされていた私は、ひろみが失恋したことを知っていた。

けど、私にぬけぬけと告白して来たこの男がどんな反応するのか見たくて、知ったかぶった。

「私、ひろみと友達なの分かってるよね?」

「う、ん…」

「じゃあなんでそんなこと言えんの?」

そもそも「かもしんない」ってなんだよ。

恋愛経験無いからって馬鹿にしてんのか。

そんなんで付き合いたいと思えるわけねーだろ。

俯いていた彼が顔を上げたかと思うと、私の両肩を掴んだ。

「試しにちょっとの期間だけでも良いから!」

「馬鹿?放して!」

「好きになっちゃったんだからしょうがないじゃん」

真剣な彼と目が合って、私は呆然としていた。

言ってることがいまいち分かんなかったから、真剣に見えただけかもしれない。

廊下で盛大に行われたこの状況は、当然、ひろみにも見られていた。
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