カナリアンソウル
私は言いようのない暗澹とした気分になりながら、教室に戻った。

「絶対って確信できるなにかが欲しいわけね――」

ひろみはささやいた。

私は顔を上げ、握ったペンの端をかじる。

お互いの気持ちをハッキリさせて付き合えたら良いな、なんて思った矢先の一悶着。

「もう私ダメ…」

ひろみは、私を元気づけるため、「さて、素直にお祭りに行きたいとでも言いに行く?」というジェスチャーをしてみせようとした。

だけど私はただ「こわい、無理」という目をしていただろう。

「あいつ不器用なんじゃない?」

ひろみが聞く。

「そ、そうなのかな」

私は口角を痙攣させて、口ごもった。

「そうだと思うんだよなあ……やっぱさ、両想いってやつじゃない?」

ゴクって唾を飲む音と、自分の喉仏が動くのを感じた。

「私は相性悪いとしか思えない!」

「あんたら見てたら、うちまで複雑な気になるわ」

ひろみはため息をもらした。

人にはそれぞれ抱えてる気持ちがある。

それは相手にとって簡単なことでも、自分にとってはとても重大だったりするもんだ。

勿論、お互いにとって重大なこともあれば逆のパターンだってある。
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