カナリアンソウル
―五月十三日。


朝、登校するときに校門の辺りで、病院で見た綺麗目な女の人とすれ違った。


向こうは気付いて無かったみたいだけど。




『あーきっ!おはよ』


「おー」


『…結衣だけど?』


“まさか”と思って恐る恐る聞いてみると、「わかるよ」の一言だけ言って何かを黙々と書き続ける明希。


『な〜にしてんのっ?』


ちょっと覗くふりをしようと身を乗り出したら、何かがびっしり書かれたノートが見えた。


すぐズラされたけど。


『ちょっとぐらい見せろ!』


「駄目だよ」


あたしの顔を見て、八重歯を出してニッコリ笑う明希。


『…ごめん』


明希は、良いよ。と言って目線をノートに戻し、ページをパラパラめくる。


『今日機嫌良くないの?』


「ん?いや、んなことないよ?」


『じゃあもっと嬉しそうにしろよ。毎日顔見て飽きちゃった?』


冗談っぽく笑ってみたけど、明希は机をジッーと見ていた。


反応してよ。


『明希〜、やっぱなんかあったんでしょ?』


ホントどうしちゃったの。


『言えない?』







「…また、入院することになった」
< 39 / 116 >

この作品をシェア

pagetop