カナリアンソウル
『嫌だー、先生助けるとか…イヤ』


明希、先生になれるかな。


なれると良いな。


沢山のことを覚えて、昔は忘れがちだったけどね。なんて生徒に笑って話せる先生に。


『優しい先生になって』


やばい、泣きそ…


「結衣…?」


表情に出てたのか、明希は心配そうにあたしの顔を覗き込んで来た。


『…見んな』


「見ない…、ようにします」


明希はちょっと真剣な顔で、またペンを握った。


『先生になるって…夢、応援して…やるよ』


声が途切れる。


「泣かないのっ!いつもみたく男でいなさい!」


『女だっつーの!…まだ泣いてないし』


「あら、そっかそっか」


『ばかにすんな』


「してないよ〜ん。結衣はなんか夢ある?」


全く…


あたしの神経がすり減るっての。


『ゆめ〜…?』


「今なら介護士とか人気じゃない?」


『あたし、一応夢あるよ。芸術家になること』


「…んなキャラ?」


『思うしょ?中学んときもキャラじゃないって言われた』


「だろうな」


机を軽く叩きながらケラケラ笑う彼が、また入院しなきゃいけないとは思えない。
< 41 / 116 >

この作品をシェア

pagetop