カナリアンソウル
『あたしも楽しみだよ。でも絶対に無理だけはしないでね?』


お祭りに行く頃、明希と出会って半年になる―


時間が経つのってこんなに早いもんなのかな。


「無理したい!だって外出て歩くの久しぶりだし、めちゃくちゃ楽しみなんだから!」


無理したいって…


言っても聞かないパターンってヤツね。


『なんかウケるっ!明希、子供みたいだよっ?』


昼間の空気はどこ行っちゃったんだか。


「テンションも上がるわ!マジ女の子と歩くとか贅沢だなぁ〜、俺。みたいな?」


『バカっ!そんなんばっか考えてんでしょ!』


「良いじゃん!楽しみがあると毎日頑張れるしさっ!」


良かった。


『そうだね。じゃ、そろそろ切るよ?』


「うん、次は俺からかけるわ」


『待ってる。また明日ね』


「うん、また明日」



電話切ってから思った。


今の…


何の良かった?


嫌われてなくて良かった?


お祭り一緒に行けて良かった?


なんだろう。


あたしは明希との思い出の中に一人だけ残されていくのかもしれないのに。


明希は、なにもかも全部忘れちゃうかもしれにのに―…
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