カナリアンソウル
「男は皆そうやって遊ぶのが好きなんだよ。瞑は貴のどこに惚れたの?外見は微妙だから、雰囲気とかかな。今あんじゃん?雰囲気モテみたいなのさ――」

どさくさに紛れ、ひろみは無茶苦茶なことを言う。

それを聞いて「そうかも」と妙に納得してしまったが、すぐさま頭から追い払った。

「半年ってこんなもん?」

ひろみは前を向いたまま、溜め息を吐き出して訊いてきた。

「わかんない。私、半年付き合ったこと無いし」

「そうだよね。三年も片想いだもんね」

感心するよ、と言わんばかりの抑揚で、ひろみはガタガタとイスを前後に行ったり来たりさせた。

「さっきみたいに勢いじゃなくてさ、本気で貴に言ってみて。好きって」

なんでよ――と声は出したものの、その後がどうにも続かない。

「うち、新鮮な気持ちになりたい。他人の初な恋愛見てさ」

その自分勝手な根拠にうなるも、なおさら後が続かない。

当人は興味があるのか無いのか、遠くを見てる様子である。

「ひろみの気持ち、ちゃんと卓人に伝えなよ。まだ、好きだよね?」

頭の上から一時間目開始を告げる音。

体育なのに教室も移動してなけりゃ、着替えてもいない。
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