カナリアンソウル
「結衣カリカリして大阪のおばちゃんみたいだよ?」


『あたしだって、うるさくなりたくてなってるワケじゃ―…』


「しーっ!」


あたしの口元に明希の人差し指が当たる。


「夏祭り、楽しみだ…」


そして、窓の方を見たままつぶやく彼。


『あたしと行ってもつまんないかもよ?期待はずれかも』



「そんな風に自分で言ってたら駄目」


『う〜ん、うん。てか、さっきの!もうしないでね!』


最後の一切れを乱暴に口に放り込んで、リンゴの皮で遊びながら明希の方を少し見た。


「しませんよ!もう今日はリンゴいらねーし!」


…生意気。


ちょっとでもドキドキしたあたしが馬鹿でした。


『はいはいわかりましたよっ!ホント意味わかんない。意地悪だし』


そういって手早くリンゴの皮やら果物ナイフを片付けようとしたら、名前を呼ばれて明希の顔を見た。


「……結衣、」


彼は真剣な顔つきになったかと思うと、あたしの腕を軽く引いた。


『あっ!ちょっ―…』




そのあとは、長い長い優しいキス。


こんなに優しくて暖かくて、安心できる気持ちになれたのは初めてだった―…
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