カナリアンソウル
―六月九日。


そんなこんなで悩みながらも一週間。


果穂は決して、質問の答えを急かしはしなかった。相変わらずの様子で、ただ気長に待っているらしい。


「…最近元気ないね」


『そ?』


「うん。何かね」


『明希がいきなりキスしたからじゃない?』


小川が流れるようにサラサラと出た言葉。別にだから“何か答え”を求めた訳じゃない。


明希を困らせても仕方の無いことだからだ。


本当は果穂に明希のことを話すかどうかで悩んでいるのが、外に変なオーラとして放出されているのだろうけど。


「キス…したね」


『したねぇ〜。あ〜、頭重い。昨日寝てないの』


あたしは明希がいつもご飯を食べているテーブル台に頭を伏せ、ダラダラと溶けた。


「別に、良いじゃん。したかったんだもん。そんな前の話ほじくり返すなよ」


コラコラ。


どっかのヤリチンみたいな発言して不貞腐れるのは駄目でしょ。


『良いよ良いよ、若い証拠』


「なんかその言い方ムカつくから」


『じゃあ、どお言やあ良いのさ』


「どうって…」


『明希だって、ほんの出来心でしたんでしょ〜?違うの?』
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