カナリアンソウル
少し頭を上げて目だけ上に動かす。


上目遣い的な。


マグカップに蓋をしながら、怪訝そうな顔でこっちを見る明希と目が合った。


『なに?』


「老けたな!」


そこ、笑うとこじゃないんですけど。


話し思いっきり逸らしてるし。


『老けたあたしは嫌いですか〜?』


ちょっと変な歌にして聞いてみた。


特に意味も無く。


「いいえ、僕は好きです」


へぇー、僕だって。


明希って女のあたしより萌え要素持ってるわ。


『ありがと。おばあちゃんになっても見捨てんなよ』


「見捨てないよ。結衣、元気なおばあちゃんになりそうだ」


明希に髪をいじられて、今にも夢の中に行きそう。


きっと明希がメイドの格好で、あたしがウェイターになる夢だと思う。


目もうつらうつら閉じかけた時、明希の手が止まった。







「結衣が、…好き」








…………、…。




きっと眠ってると思ったんだろう。


恥ずかしいから寝てて何も聞こえなかったことにしよう。


あたしが眠ってるときに言ったのには、ちゃんとした理由があると思うから。


明希なりの理由が―…
< 54 / 116 >

この作品をシェア

pagetop