カナリアンソウル
私は泣きそうになった。

貴が煙草を吸っている、という事実を目の当たりにしているからだ。

すっと隣から煙草を一本差し出された。

吸わないからと言おうとしたら、なぜか私がリクエストしたかった曲のイントロが始まっていた。

私が大好きな曲を、淡々とゆったりとしたノリで歌い上げる。

「卓人、学校辞めるって」

いつもの低い声が聞こえた次の瞬間、黒と白の瞳が私を正面で見据えていた。

「働くの?」

「みたい。俺も力になってやりたいけど、学生だしな――」

「何か出来ることあるよ!私もひろみが困ったら力になりたいと思ってるしっ」

人の為に泣いたり喜んだりしている人を見ると、多少は胡散臭く感じる。

でも、貴は自分との関わりを大切にする人だと今さらながら気付いた。

「俺も出来ることしてやりたい」

私は黙ってうなずいた。

もちろん、本当は何か出来る自信なんてない。

そんな器用に相手のこと考えたり、同情なんか出来ないし。

カラオケの画面には、色んなアーティストのインタビューやらが流れている。

「瞑も何か歌えよ」

「えっ、私?歌ったらなんかある?」

「なんかあるって……アホか」
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