カナリアンソウル
「休み?」私はソワソワしながら訊ねた。

「もしかして、知らなかった?」

卓人は教室を出るのに、後ろドアのそばに立って、得意気に言った。

「知らない!」私は言葉をつづけた。

「どうして私には何も教えてくれないの……」

「俺はあいつの親友だからなあ」

私は目を丸くして唖然とした。

それを見たひろみと卓人は視線をかわして、笑い出しそうになっている。

「私だって彼女なのにぃ」

連絡のない携帯を手に取り、現実を痛感した私は、情けない声をあげた。

「親友は親友。彼女は彼女。心配なら貴の家行ってみ?」

私は卓人をじっくりながめた。

「わかった!貴の家教えて!」

「今まで付き合ってて家も知らねーのか。しょーがないやつ」

卓人は笑って後ろを向くと、手を振りながら廊下に消えて行った。

「ちょっと、住所はー?」

私の声は周りのざわつきにかき消されたが、ひろみには届いていた。

「瞑は気にしないでお見舞いに行っておいで?住所はうちが聞いといてあげるよ」

確かに、未だに知らないことだらけ。

こんなんで良いのかと疑問だらけながらも、貴と付き合い始めて半年以上が経とうとしていた。
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