カナリアンソウル
貴は立ち上がったまま、じっと私の顔を見ている。

真っ黒な瞳と、少しだけ瞼に掛かる綺麗な銀髪しか目に入らない。

貴は首を傾げた。

丁寧に梳かれた髪の先が肩に触れて、音が鳴りそうな具合にしゃらしゃら揺れた。

人は団体生活の中で、さらに特定の相手を作って生活する性質があると思う。

少なくとも私はそうなのだと実感した。

ご飯食べるのも、トイレ行くのも、休み時間も。

まあ、部活はバラバラになったけど。

とにかく、何をするにもひろみと一緒だ。

その辺の男子とかからしたら、ただのキモイ女子かもしれない。

でも、その中で毎日同じことを繰り返すだけの平凡な生活スタイルを私なりに作りあげていたつもりだった。

「俺より良い男だよ。卓人は」

「そうかもね」

言葉の意味がつかめぬまま、私は冗談のつもりで返した。

すると、貴はくそ真面目な顔でこう答えた。

「俺と付き合うか。そしたら解決すんじゃん」

「はあ?いきなりなに?」

私は思わず甲高い声を上げて、貴の顔を見つめた。

「付き合うって、付き合うことだよね?」

「そうだよ。それ以外なんかあんの?」

「ちょっ、ちょい待ち――」
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