カナリアンソウル
携帯電話の充電も無くなり、真っ黒になった画面を見つめた。


変なの。


前はこんなことで悩んだことなかったのに、今は自分の居場所見付けるのに必死になってる。


「あれ?結衣じゃん」


顔を上げるとタカが居た。


『あ、久しぶり』


でも無いんだけど咄嗟に出た言葉はこれ。


「明希の見舞い来てんだ」


『まあ…、うん』


「そか」


少し申し訳なさそうに笑ったタカは、少し大人っぽくなった気がする。


『じゃ。あたし行くね』


普通に話せてる自分が不思議。


「あの、さ。ずっと言おうと思ってたんだけど、あんときごめんな。俺、自分のことばっかで…」


その一言であたしの胸は潰れそうなくらい苦しくなった。


『もう良い!だって、もう一年も前の話なんだからさ。そんな顔しないで!こないだだって普通に話したじゃん』


「結衣…、」


『あたしホントにもう行くから!じゃあね!』


あたし、上手く笑えてるかな。


タカはバツの悪そうな顔で頭を掻き、じゃあ。と言って明希の病室の方に向かった。


こんなもんだよ。


わだかまりが取れるときって、所詮こんな感じ。
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