カナリアンソウル
―四月九日。


入学式当日。


担任は三十路前の男で、際どい感じ。


遅刻してきた男が変なギャグかまして、スベった所であたしの自己紹介の番が来た。


何でこんな空気で自分に順番が……


ごめんなさい。


全く笑えないんですけど。


『高瀬結衣です…、宜しくお願いします』


クラスには友達も知り合いすらいなかった。


クラスメイトは皆他人。


覚えてることは、自分の前の席で「私、美加。仲良くしてね」ニッコリ笑った美加。


彼女の白と黒のハッキリした目がなんだか怖かった。


これ、教科書に押すハンコね。ってインクの台を渡されて受け取ったたものの‥


正直あたしは友達とか作る気無かったし、カナリきょどってた。


なんか友達とかって皆、自然と仲良くなって出来る。


このとき既に美加とあたしの間には“友達”という薄い膜が出来上がっていた。


時間を重ねるごとにその膜は頑丈になるのだ。


美加とはずっと仲良くしていけると思ってた。


それが今は果穂と居る。


世の中どうなるかわかんない。


高校生のあたしが言えたモンじゃないけど。


ホント、そう思う。
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