どりーむタイムズ



 ―机を運び始めて約2時間。やっと、最後の机を教室に移動する所だ。

 あれから彼女は、一言も話していない。
 僕が一方的に話しかけても、ただ黙ってそれに応じるだけだった。


 でも、そんな空気に何時間も耐えられる僕ではなかった。

「…真田、足フラついてるよ。もう終わるし、先帰ってれば?」
「いい。斉藤君に気づかってもらう筋合いないし。」

 …即答。相当敵意持たれてるよな、絶対。
「でも、マジで危ないから休んだら?」
「…だから、斉藤君には関係ないでしよ!!!!」

 ―その時、大声を出して振り向きかけた彼女が階段の上でイスを持ったまま、バランスを崩した。


「…きゃっ!つっっ!!」
「うっっ!!」

 とっさに僕は、彼女を支えた。


 でもイスが邪魔で、僕達は壁に叩きつけられた。

「………真田。大丈夫…か?」

 僕は、彼女を座らせて聞いた。

「…大丈夫だから、早く終わらせよう。」

 そう言って彼女は立ち上がろうとしたが、足を挫いていたみたいで苦い顔をして、また座り込んだ。

「いいよ。真田はここで待ってなよ。」

 こんな所で時間をあまり使いたくない。


「…嫌。先生に見つかるもん。」

 まったく…まるで、駄々をこねた子供みたいだ。

「……しょうがないな。」

 そう言って、僕は彼女を抱え上げた。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!私、絶対重いって…恥ずいし。誰かに見られちゃうよ~。」

 彼女が、焦って弱音を吐いていた。
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