どりーむタイムズ
「…ってぇー。」
―なんとか着いたみたいだ。
目を開けると、様々な光が一気に頭の中へ流れ込んできた。
「うっっ…」
おもわず目を手で覆う。
…なんだ、今の光は。とにかくたくさんの見た事もない色の明るい光が、周りを覆い尽くしていた。
今度は恐る恐る目を開けてみる。
と…目の前に、人の顔があった。
僕は、すぐに身を後ろに引いた。
その行動で、相手の人も少し驚いたようだった。でもその人は、微かな笑みを浮かべた。
「あ、ごめんなさい。あの…斉藤深垢耶さんですか?私、あなたの転入するクラスの学級委員をしている、真田由利っていうんだけどこれからよろしくね。先生が呼んでるから、一緒に来て下さい。」
―サイトウミクヤ?僕のここでの名前…かな。
膝を見ると、僕の写真が貼ってある紙が置いてあり、その下に『サイトウミクヤ』と書かれていた。
「う、うん…。」
僕は、しどろもどろに返事をした。
「斉藤君?早く行かないと朝学級に遅れるよ。」
真田…さんが少し呆れたような顔で言った。
「あ、ああ。今行く。」
と、とりあえずこの人についていってみよう。
僕は膝の上の紙を取って立ち上がった。
「あ、それって斉藤君の荷物だよね。」
真田さんが差した方向には、鞄が放り投げてあった。
「おぅ、ありがとう。」
これも多分、僕の持ち物だろう。
僕は鞄を持ち上げて中を見た。
中には本が4、5冊ぐらい入っていた。
僕は黙って鞄をかついで、真田さんと歩き出した。
「学級委員、やってくれない?」
「は、俺に?」
突然の真田さんの申し出に、正直僕は戸惑った。
―学級委員?…聞いたはずのない言葉が、なぜか僕には理解できた。
この世界に来てしまったからだろうか。
それでも、全く後悔はない。
人に同じ立場に見られるのが、嬉しかったから。
だから僕はこの世界で一生、生きていく。
もちろん、アッチに戻るつもりもない。
それにあの小さな世界には、もう僕の居場所はない。
…最初からなかったのかも。