蝙蝠の嘘
 ――――その夜。

 病院の脇の大きな木の枝にぶら下がり、
彼は考え込んでいました。

(どうしよう…
あのコの目が見えるようになるのは嬉しいけれど、
そしたら僕が蝙蝠だって、
あのコにバレちゃう……)

 蝙蝠は自分を小鳥だと思っている
女の子に自分の姿を見られたく
ありませんでした。

(あのコと別れるのは辛いけど、
このまま逃げちゃおうか…
――でも、僕が急にいなくなったら
悲しむかなぁ……)

 蝙蝠が悩んでいた
その時――――

「ピーピー」

(ん?)

 蝙蝠が木の根元に目をやると、
巣から落ちた雛鳥が一羽。

 でも、親鳥の姿は
どこにもありません。

(大変だ、このままじゃ…
――――はっ、そうだっ!)

 蝙蝠は雛鳥を助けながら、
ある決意を固めていました。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop