ナズナとリトの冒険物語
「…まさか」

ナズナ以外にそんなこと考える人いるわけない。

いや、人じゃないけどね。

「僕はリト」

リトはそう名乗ると、家出を決意するに至った心境を熱心に説明した。

次第にナズナは、この子うさぎリトが好きになって来た。

二人は似ていた。

ナズナもリトも、この村で定められている役割に不満を持っている。

外の世界に自分の生きがいを探しに行こうとしているのだ。

「本当はナズナも一人じゃ心細かったの」

ナズナはしゃがんでリトの頭を撫でた。

折れた左耳を、ことのほか愛おしそうに。

「いいわ。一緒に行きましょう」

こうして二人の旅が始まった。
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