空から笑ってて
大分歩いたと思う。こんなことなら単車でも乗ってくれば良かった。
コイツ。俺をどこに連れてく気なんだ?
「おい‥‥‥。」
「♪〜♪〜♪〜」
シカトかよ。
「おいって!!」
「ゆーう!!!」
「は??」
「自己紹介したじゃん!?“おい”じゃなくて、“ゆう”って呼んで??」
「‥‥‥‥‥。」
「ほーら〜!呼ばないとどこ行くか教えないよ??」
「‥‥ゆう‥‥。」
仕方ないから呼んでやった。だって行き先知りたいし。
「よくできました〜!!」
ガキじゃねぇんだから‥‥。
優汐は、ニコッと笑って俺を見上げてる。その笑顔を見たら許してしまった。
きっと、優汐の屈託のない笑顔に弱いのはこの頃からだったんだろう。
「んでどこ行くか教えろよ。」
気づけば、学校を抜けて近くの病院の前まで来ていた。
「んー。ココ。」
優汐はその病院を指差した。
「‥‥‥‥‥。」
なんですと??
「ココ。」
「病院‥‥‥。」
「はい‥‥‥。」
口が開いてたと思う。
なんでか?その病院は俺ん家が経営している大学病院だったから。
「俺帰るわ‥‥‥。」
来るんじゃなかった。
俺は出来の悪い息子で。出来の良い弟と、何かと比べられる。
そんな家が嫌だから今は一人暮らし。
叔母から聞いた話では、親は俺の顔も見たくないらしい。
叔母は何かと俺の味方をしてくれる、唯一の理解者だ。