空から笑ってて



大分歩いたと思う。こんなことなら単車でも乗ってくれば良かった。


コイツ。俺をどこに連れてく気なんだ?


「おい‥‥‥。」


「♪〜♪〜♪〜」


シカトかよ。


「おいって!!」


「ゆーう!!!」


「は??」


「自己紹介したじゃん!?“おい”じゃなくて、“ゆう”って呼んで??」


「‥‥‥‥‥。」


「ほーら〜!呼ばないとどこ行くか教えないよ??」


「‥‥ゆう‥‥。」


仕方ないから呼んでやった。だって行き先知りたいし。


「よくできました〜!!」


ガキじゃねぇんだから‥‥。
優汐は、ニコッと笑って俺を見上げてる。その笑顔を見たら許してしまった。
きっと、優汐の屈託のない笑顔に弱いのはこの頃からだったんだろう。


「んでどこ行くか教えろよ。」


気づけば、学校を抜けて近くの病院の前まで来ていた。


「んー。ココ。」


優汐はその病院を指差した。


「‥‥‥‥‥。」


なんですと??


「ココ。」


「病院‥‥‥。」


「はい‥‥‥。」


口が開いてたと思う。
なんでか?その病院は俺ん家が経営している大学病院だったから。


「俺帰るわ‥‥‥。」


来るんじゃなかった。
俺は出来の悪い息子で。出来の良い弟と、何かと比べられる。
そんな家が嫌だから今は一人暮らし。
叔母から聞いた話では、親は俺の顔も見たくないらしい。
叔母は何かと俺の味方をしてくれる、唯一の理解者だ。
< 6 / 46 >

この作品をシェア

pagetop