Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
ドM女
―ドM女―
渋々だけど、卓弥と彼女の仕組んだ出会いに期待してみる。
「お前の彼女の友達なんだろ?俺を紹介して、後悔することになるんじゃねぇ?」
「ははは。隆介なら安心だって!!何だかんだ言って、女の子にも優しいし」
優しい?
俺が?
「隆介に憧れてる女の子、多いんだよ。お前は気付いてないけど」
「それ、誤解だよ。卓弥に気があんだろーが」
「違う違う!!硬派でかっこいいって言われてんだよ、隆介は」
思い出す。
高校時代。
硬派って言われていたけど、硬派って何だよ!って思っていた。
野球に青春を捧げていた俺は、いつも比べられていた。
“桜井健太”と。
野球でも、私生活でも。
優しくて爽やかでいつも笑顔の健太と、近寄りがたくて機嫌悪そうな俺。
健太派と俺派って女子の間で分かれるくらい、目立ってた2人だった。
健太と卓弥は、似てるってこと?
確かに、俺にない部分を持っていて、いつも俺を助けてくれる。
不器用で口下手な俺をフォローしてくれる点では似ているかもしれないな。
健太のことを思い出してしまったせいで、俺のテンションが下がる。
「だるくなってきた。やっぱ行きたくねぇな」
俺は大学の駐車場まで来て、卓弥を困らせた。