Slow Magic ―俺を変えてくれた人―




もういないんだ。


求めても母さんは戻っては来ない。





母さんは俺を捨てた。






もう思い出すのはやめようと、何十回何百回と思った。


でも、やっぱり記憶から消すことはできなかった。






バイクに乗る。


信号で停まる。




振り返った卓弥に言う。




「またケーキ屋?」



卓弥は、ごめんごめんと謝って、前を向いた。






どんな顔して美亜に会えばいい?


別にアイツは、俺に会いたくないんじゃないか?







俺だって会いたくないけど。





会いたくないけど。




胸がざわざわする。



久しぶりだった。






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