Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
「おい、俺からの電話にはすぐ出ろって言ってんだろ?」
俺は、ベランダに出て携帯電話を耳と肩に挟みながら、夜空を見つめていた。
『ごめんね、隆介。許して!お風呂入ってたんだよ』
俺は美亜の声を聞きたかったんだ。
よみがえる鈴子への想いをかき消すように、美亜をいじめる。
「じゃあ、裸なの?お前」
『パジャマ着てるに決まってるじゃん!!ば~か』
「あぁ??お前、誰に向かってバカって言った?ふざけんなよ」
『もう~!今日の隆介怖いよ』
美亜の声は、とにかく明るい。
ほっとする。
だけど、俺は気づいていた。
美亜の声を聞いても、俺の胸が高鳴ったりしない。
美亜は俺にとって、大事な存在だけど・・・・・・
これは恋じゃない。
愛でもない。
「お前、ハムスターって好き?」
俺の唐突な質問に、美亜は笑いながら答えた。
『ハムスター!?めちゃめちゃかわいいよね!すっごい興味ある!』
そうか。
美亜。
お前はハムスターが好きなんだな。
美亜、ごめんな。
俺は美亜を利用しているだけなのかもしれない。
寂しさを埋めて欲しい時だけお前を呼び出して・・・・・・
でも、ちゃんとわかってる。
俺は美亜を好きじゃない。