Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
「お腹減ったね、隆介」
「ばか!お前のせいだろ」
美亜の頭を叩こうとしてその手を引っ込める。
美亜は叩かれるのを待っていたので、俺が叩くのをやめると残念そうな顔をした。
「ドM女ぁ」
「ふふふ」
この心地良い時間が、どれほど俺を癒してくれているのか。
俺、バカだな。
美亜のことこんなにも必要だってわかってんのに、何も言えないなんてな。
家に着き、俺は自分の行動に驚いた。
慎重な性格の俺が、鍵もかけずに家を飛び出していた。
床に転がった携帯電話を拾いながら、大きく息を吐く。
背中に温度を感じた。
「んだよ!!」
振り返った俺の目に映ったのは、目を潤ませた美亜。
俺の背中に触れたのは美亜の震えた指先だった。