Slow Magic ―俺を変えてくれた人―
お弁当を温め直し、両手を顔の前で合わす。
「いただきます」
こんな風にずっといられたらいいな。
俺、すっげーバカだけど。
今、想像した。
美亜との未来を。
鈴子じゃなく、美亜との未来を。
寝起きの機嫌悪い俺に朝飯を作ってくれる美亜。
俺は、朝から元気な美亜を見て、ホッとするんだ。
美亜の隣にはガキがいて、忙しい出勤前の俺に甘えてくる。
「どしたの?」
美亜は、箸を止めていた俺を見て声をかけた。
俺の妄想、終了。
「何でもねーよ!」
硬くなった飯を口いっぱいに頬張って、俺はニヤけそうな顔を隠す。
もう決まってんだよな。
俺の中で。
ちゃんと。
誰と一緒にいたいのか。
誰と歩んで行きたいのか。
でも、完璧主義な俺は、心の中にいる鈴子の存在を許せないんだ。
鈴子がほんの少しでも俺の心の中にいる間は、美亜を愛しちゃいけないって思うんだ。